ブロードウェイの偉才が集結した奇跡の新作『プリンス・オブ・ブロードウェイ』、まもなく世界初演!

更新日:2015/10/16

現代アメリカ演劇界でもっとも偉大な演出家、巨匠ハロルド・プリンスの手による待望の最新ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』が10月下旬、日本で世界初演の幕を開ける。
初日を来週に控え、ブロードウェイミュージカル界を代表する実力派スターたちが来日。
マスコミ向け公開稽古で圧巻のパフォーマンスを披露した。

プリンス・オブ・ブロードウェイ公開稽古

その60年強のキャリアで、『ウエスト・サイド・ストーリー』『キャバレー』『屋根の上のヴァイオリン弾き』『エビータ』『スウィーニー・トッド』『オペラ座の怪人』など、数え切れないほどの傑作ミュージカルを世に送り出したプリンス。
彼のキャリアの集大成『プリンス・オブ・ブロードウェイ』は、現代のブロードウェイを牽引するスター俳優9名と宝塚歌劇・元星組トップスターの柚希礼音を起用した贅沢極まりないキャスティングで、かの名曲・名場面をビビッドに蘇らせるというトリビュート形式のミュージカルだ。

しかもコンサート上演ではなく、トニー賞受賞歴を誇る大物プランナーたちが衣裳や美術をフルプロダクションさながらに完全創作。
プリンスが新たな視点で演出を施し、20作近い有名ミュージカルの名場面を本場ブロードウェイそのままのクオリティーで次から次へと堪能できる、奇跡のような趣向だ。
これらの傑作のすべてが、一人の男の才能と情熱によって誕生したという事実を改めて知ると、驚きと感動を覚えずにはいられない。

10月15日(金)の公開稽古では、ブロードウェイで今もっともその才能を買われている若手実力派トニー・ヤズベックが、日本未上演の傑作『フォーリーズ』からのナンバーで情熱の限りを尽くしたタップダンスを披露。
『オペラ座の怪人』で一躍スターになったラミン・カリムルーは自身の当たり役に再度挑み、名曲〈ミュージック・オブ・ザ・ナイト〉で豊潤さを増したドラマティックなテノールを響かせる。

ラミン・カリムルー/ケイリー・アン・ヴォーヒーズ/トニー・ヤズベック

▲[左]ラミン・カリムルーとケイリー・アン・ヴォーヒーズ、[右]トニー・ヤズベック

唯一の日本人キャストとして、言語の違いを超えてカンパニーメンバーとの絆を築く柚希は、往年の名作『くたばれ!ヤンキース』のダンスシーンで、驚くほど長く美しい手足をエレガントかつダイナミックにしならせ、観客を大いに魅了しそうな勢いだ。

トニー・ヤズベックと柚希礼音

▲トニー・ヤズベック(左)と柚希礼音(右)

まだ無名のブリヨーナ・マリー・パーハムの身体には、あらゆるタイプの主演女優の声域と表現力が収まっており、ライザ・ミネリ風の『キャバレー』のヒロインも、リリック・ソプラノの優美なバラードも、ジャズ・スタンダードとなった『ショウ・ボート』の〈キャント・ヘルプ・ラヴィン・ザット・マン〉も完璧。
スター誕生の予感がする。

『キャバレー』で美声を披露するブリヨーナ・マリー・パーハム

▲『キャバレー』で美声を披露するブリヨーナ・マリー・パーハム

さらに興味深いのは、プリンスの貴重なモノローグが劇中に差し挟まれることだ(プリンスとの縁が深い俳優・市村正親が日本語で吹替を担当)。
華やかなミュージカル史に足を踏み入れるようなドキュメンタリー的側面もあり、ミュージカルファンもそうでない向きも、ある偉才の成功の秘訣に触れるようなワクワク感を楽しめそう。
ミュージカルに初めて触れるビギナー向けの入門編としても、これほど相応しい演目はない。
一生の記憶に残る、素晴らしい初体験を飾ることができるだろう。

ラミン・カリムルー/トニー・ヤズベック/ジョシュ・グリセッティ/シュラー・ヘンズリー

(文=武次光世 撮影=RYOJI FUKUOKA[GEKKO])